ラムサール条約湿地


 

豊田市の湧水湿地とラムサール条約

 

東海地方の丘陵地には、谷間や斜面に成立する小規模な湧水湿地がたくさんあります。これらの湿地の特徴は、貧栄養な湿原であること、狭い面積であること、この地方固有の植物や昆虫が見られることです。
湧水湿地は、水を浸透させにくい地層と水を浸透させやすい地層が積み重なっているところで湧き出した水が地表面に広がって湿地となっています。土砂崩れによって地表が剥がれることも、湧水湿地ができる原因のひとつです。

 これらの湧水湿地にはミカワシオガマやシラタマホシクサ、シデコブシやトウカイコモウセンゴケなど希少な植物が生育しています。東海丘陵要素植物と呼ばれているこれらの植物は、その多くが世界でこの地域でしか見られない東海地方固有のものです。東海丘陵要素植物は、栄養が豊かな場所では他の植物に負けてしまうため、貧栄養の湧水湿地を主な生育場所としています。

 

 

表:東海丘陵湧水湿地群

 愛知県豊田市にある矢並湿地、上高湿地、恩真寺湿地はこうした湧水湿地の代表として、2012年に湿地に関する国際的な条約であるラムサール条約の登録湿地となりました。この三湿地を東海丘陵湧水湿地群と呼びます。

※ラムサール条約……正式名称は「特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」といいますが、この条約が採択された国際会議の開催地であるイランの都市ラムサールにちなみ、一般に「ラムサール条約」と呼ばれています。水鳥に限らず、希少な動植物やその地域を代表する重要な湿地が登録されています。
参考:
環境省「ラムサール条約と条約湿地」

※資料ダウンロード: ラムサール条約湿地「東海丘陵湧水湿地群」(1.98MB)

 

東海丘陵湧水湿地群

 ラムサール条約の登録湿地である、矢並湿地上高湿地恩真寺湿地をご紹介します。自然環境の保全を優先するため、いずれの湿地も常時公開はしておらず、自然観察会などでの参加でのみ見学が可能です。
 観察会の日程等については、イベント案内のページをご覧ください。


 

矢並湿地

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 矢並湿地は豊田市の中心市街地から東へ4km、周囲を低い山に囲まれた谷に成立した湿地です。市道を挟んで西湿地と東湿地の二つにわかれ、湿地植物をはじめとした約300種類の植物とハッチョウトンボやヒメタイコウチなど約500種類の昆虫が確認されています。
 8月中旬頃から開花するシラタマホシクサは湿地を一面の白で埋め尽くし、秋頃にはミカワシオガマのピンク色とともに湿地を鮮やかに彩ります。
 湿地を貧栄養の状態に保つため、近隣住民を主体とした「矢並湿地保存会」により草刈りなどの保全作業が継続的に行われています。
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: yanami-7-1.jpg
矢並湿地保存会による活動の様子

※資料ダウンロード:矢並湿地パンフレット(515KB)

上高湿地

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上高湿地は、豊田市上高町の山林の中に位置する湿地です。ため池の周囲に3つの湿地があり、上鷹見小学校に児童によって、それぞれトウカイコモウセンゴケの湿地、シデコブシの湿地、シラタマホシクサの湿地という名前がつけられています。傾斜地の岩場や湧水が流れる谷、起伏の緩やかな湿地など、多様な地形に多様な植生が存在しています。特に、東海丘陵湧水湿地群の中でトウカイコモウセンゴケが見られるのは上高湿地のみです。
 「上高湿地を守る会」により保全作業が行われているほか、湿地からほど近い上鷹見小学校の児童が年に数回訪れ、未来の保護活動の担い手として学習を行っています。
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: kamitaka-7.jpg
上鷹見小の児童による湿地ガイド

恩真寺湿地

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恩真寺湿地は、恩真寺境内の北東に位置する湿地です。草本群落である本湿地とその上流にある森林に囲まれた奥湿地の2つの湿地から成り、シデコブシやヘビノボラズ、ミカワシオガマ、シラタマホシクサなど、四季を通じて多様な植生を見ることができます。
 恩真寺は、郷土を代表する偉人である鈴木正三(1579年-1655年)の建立したお寺であり、その境内にある湿地とともに歴史的・文化的な価値を持っています。
 地元自治区の人たちによって、定期的な管理と保全作業が行われています。

恩真寺

※資料ダウンロード:恩真寺湿地パンフレット(284KB)