【ラムサール条約湿地矢並湿地】湿地の保全作業-コガマ刈り

2025年7月23日~31日の期間、ラムサール条約の第15回締約国会議がジンバブエで開かれました。今年、日本は54番目の登録湿地として「猪苗代湖(福島県)」が登録されました!
ラムサール条約は広く湿地の自然環境を保全し、利活用していくための条約ですが、実際に登録された湿地では様々な保全活動が行われています。

豊田市にあるラムサール条約登録湿地「東海丘陵湧水湿地群」の一つである、矢並湿地で行われている保全活動の一端をご紹介します。

ラムサール条約湿地矢並湿地の保全活動に参加してきました!

7月20日(日)豊田市自然愛護協会、矢並湿地保存会のみなさんが、矢並湿地の保全作業として「コガマ刈り」を実施されました。
自然観察の森のスタッフもこの活動にご一緒させていただきましたので、少し活動の様子をご紹介したいと思います。

2025年7月20日コガマ刈り 矢並湿地
2025年7月20日矢並湿地コガマ刈り

コガマとは、いわゆる「ガマの穂」が伸びてくる背丈の高い植物のなかまですが、
これが増えすぎないよう、毎年人力で刈り取りを行っています。
湧水でぬかるみ、足をとられるような場所もある湿地の中、
長年、保全のためにこうした湿地を維持する様々な活動をされている皆さんは、
やはり手際がよく、朝早い時間から1時間程度の作業時間でしたが、
刈りとられたコガマが山となり積みあがっていきました。

湿地のコガマ刈り作業はどうして必要なの?

コガマ
このフランクフルトのようなものがコガマの花(ガマの穂)です!

矢並湿地には二種類の湿地があります。ひとつは谷間に湧水が染み出して自然にできた湿地です。もうひとつはもともと水田だったところにできた湿地です。もともと水田だった湿地によく生える植物のひとつがコガマです。コガマは高さ1~1.5mに成長して密に生える特徴があります。湿地の植物の多くはコガマより高さが低いため、背の高いコガマが繁茂してしまうと競争に負けてしまい、多様性が低くなったり、希少な植物がみられなくなってしまいます。このため、良好な湿地環境を維持するためには、定期的に刈り取って勢いを抑制する必要があり、矢並湿地でも年1回、コガマの花(ガマの穂)をつける時期に刈り取りをおこなっています。

※コガマは湿地を代表する在来種の植物で、適度な密度であれば、必ずしも悪いものではありません。積極的に保全している湿地もあります。

保全する必要のある植物は刈らないようにしながら、あちらこちらに点在して生えているコガマを刈りとる地道な作業ですが、穂をつけているコガマがこのまま種を落とすか落とさないかで、今後の湿地の姿がかわるとても大切な作業です。

矢並湿地は普段、公開されている場所ではありませんが、季節ごとに自然観察の森が主催する観察会のイベントが行われているほか、秋には多くの方に来ていただける機会として、毎年、数日間の一般公開が行われています。
保全活動をされている方々の尽力で、季節ごとにこのような保全作業が人知れず行われていることで、可憐な草花が咲き誇る大切な湿地が守られています。

こうした活動のことも知っていただき、今年もまた矢並湿地にご来場いただけたら、見える景色がまた変わってくると思います。
今年もみなさまを矢並湿地にご案内できること楽しみにしています。